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古書 乱歩の原点 黒岩涙香著(翻案)『白髪鬼』(1894)58冊目

今回、紹介するのは、明治の大新聞人・ジャーナリスト・ 翻訳家である、黒岩涙香著『白髪鬼』である。 元はメリー・コレル女史「ヴェンデッタ」(Vendetta 復讐)であり、 それを日本の読者向けに涙香が翻案したものである。 この頃の涙香本には木版口絵が一…

7月16日 古書 春のや主人著『桐一葉』 (1896)48冊目

今回は春のや主人 (坪内雄蔵・坪内逍遙)著『桐一葉』を紹介する。 明治以降の新歌舞伎の代表作。 明治29年に春陽堂より刊行。 (私が所蔵しているのは、同年訂正三版) 写真の木版口絵(鈴木華邨画)は、 怨霊に怯える淀君が茶坊主を刺殺する場面を描いて…

ジャン・ジュネ著 『泥棒日記』(1953) 41冊目

今回、紹介するのは、 ジャン・ジュネ著『泥棒日記』である。 この本は1953年に新潮社から フランス装(仮綴)で刊行された。 訳者は朝吹三吉。 私生児で犯罪者であり、 何度か投獄もされた、ジュネが語る物語。

6月16日 古書 窪川稲子著 『素足の娘』(1940)32冊目

今回は、戦前の女流作家 窪川稲子(佐多稲子)の『素足の娘』を紹介する。 (佐多稲子は1998年10月13日逝去) この本は1940年(昭和15年)に新潮社から刊行され、 当時、ベストセラーとなった。 今となっては忘れられた作品であるが、 戦前の生活を生き生き…

6月11日 美しい本 陶山務 訳 『独り想ふ』 第一書房(1934) 29冊目

今回紹介するには、シュライエルマヘル著 陶山務訳「独り想ふ」である。 1934年1月に第一書房(長谷川巳之吉)から刊行された。 第一書房は良い装丁本を数多く刊行した出版社である。 それらの中でも、この本の装丁は実に美しい。 装丁は背角革マーブル装(…

6月5日 倉橋由美子著『スミヤキストQの冒険』26冊目

孤島の感化院に展開する奇妙な革命劇 工作員Qをとりまくグロテスクな人間達 倉橋由美子が四年の歳月をかけて結晶させた 待望の野心的書下ろし作品 (本書帯宣伝文より抜粋) この奇妙な小説は何だろうか。 一種の寓話なのだが、余りにも奇妙すぎる。 この不…

5月26日 ビブリオマーヌ刊行 三島由紀夫 著『サーカス 』 21冊目

今回、紹介するのは、限定本、豪華本で有名なプレス・ビブリオマーヌから 1966年に刊行された、三島由紀夫著「サーカス」である。 限定375部 並装背革帙入 280×220 武井武雄挿絵 三島由紀夫のペンによる署名名刺付 日本において、装丁が良い本というのは、な…

5月17日 窪田十一 訳 『人肉の市』(1923年) 15冊目

今回、紹介するのは、大正時代に翻訳され、 日本でベストセラーとなり、映画化もされた、 シェーエン女史著「人肉の市」である。 発行は奥付によれば、大正10年だと思われる。 私が所蔵している版は、大正12年3月発行五百六十版となっている。 当時、相…

5月13日 ヘレン・ザハーヴィ 著『ダーティ・ウィークエンド』(1989年)13冊目

臆病な娼婦ベラ。可憐な女ベラ。 男たちに蔑まれ、弄ばれ、怯えながら生きてきたベラ。 ある朝を境にベラは生まれ変わった。 華麗で、セクシーで凶暴な女に・・・ (本書裏表紙のレビューからの抜粋) 性的な嫌がらせを複数の男達から受け、 ベラが報復をす…

5月11日 ポリーヌ・レアージュ著 澁澤龍彦訳 金子国義挿絵『オー嬢の物語』(1954)12冊目

フランス文学『オー嬢の物語』を紹介する。 この本は現在ポルノとして有名な本である。 作者はポリーヌ・レアージュ(Pauline Reage)という名となっているが、 実際の作者は、ドミニック・オーリ(Dominique Aury)であり、 彼女は1998年4月26日に90歳で既…

5月9日 性への憧憬 安岡章太郎著『花祭』(1962年)11冊目

安岡章太郎の長編作品「花祭」は、 性の目覚め、そして性への憧憬を表現した作品である。 安岡章太郎の代表作という認識は、それほどはされていない様で有るが、 私は安岡章太郎の一連の作品の中では一番好きな作品である。 男ならば誰でも抱く、性への興味…

5月9日 リチャード・バックマン著『死のロングウォーク』(1979年)10冊目

近未来のアメリカ。 そこでは選抜された十四歳から十六歳までの少年100人を 集めて毎年五月に「ロングウォーク」という競技が行われていた。 アメリカ・カナダの国境から出発し、 コース上をただひたすら南へ歩くだけという単純な競技だ。 だが、歩行速度が…

5月8日 リビドーの爆発 大江健三郎 著 『セブンティーン』 9冊目

大江健三郎の単行本「性的人間」に収録。 この『セブンティーン』(短編)は大人に近づきつつある、 17歳を描いた、作品である。 苛立ちと性的衝動と葛藤を抱いた17歳を巧みに描写している。 大江健三郎の作品の中でも評価が高い。 大江健三郎 『性的人…

5月8日 ジョン・ファウルズ著 『コレクター』 (1963) 8冊目

現代イギリス文学『コレクター』(1963)を紹介する。 この本も私は今までに数回読んだ。 有名な本ではあるが、巷では、それほどは読まれていない。 この物語で肝心な事は監禁でもリビドーでもない、 軋轢であり、対立であり、階級闘争である。 この物語に登場…

5月8日『BIBLIOTHECA CURIOSA ET EROTICA』(1928)7冊目

今回は、ベルハルト・シュテルシーシュザナ著 佐々謙自 訳 「BIBLIOTHECA CURIOSA ET EROTICA」を紹介しよう。 この本は独逸の艶本稀覯書の「BIBLIOTHECA CURIOSA ET EROTICA」(1920?)の翻訳であり、 グロテスク社から昭和3年に限定500部(記番有り)…

5月8日 ロバート・R・マキャモン著 『スワン・ソング』 6冊目

ロバート・R・マキャモン著「スワン・ソング」 第三次世界大戦後のアメリカで繰り広げられるスリリングな物語。 核戦争後のアメリカを舞台に、善と悪が熾烈な攻防戦を繰り広げる。 ロバート・R・マキャモンの傑作。 中でもスーパーマーケットの戦いは映画「…

5月7日 ナバル女王著 『エプタメロン-Heptameron-』 (世界奇書異聞類聚の第4巻&5巻) 5冊目

今回は、ナバル女王 著「エプタメロン」を紹介する。 ナバル女王自身の書いた、『エプタメロン』(七日物語)Heptameron(1559)は、 ボッカチオの『デカメロン』と同じ傾向の作品で、フランス・ルネサンス文学の代表作である。 *ナバル女王とは、マルグリ…

5月6日 プルースト著『若き娘の告白』 4冊目

若き娘の告白 マルセル・プルースト/近藤光治、齋藤磯雄・訳 背コーネル四段マウント装、本文用紙和紙、 [表紙平Feder原画手彩色木版画入]、 限定500部 装釘 秋朱之介 -若き娘の告白/バルダサアル・シルヴァンドの死/ ヴィオラント/嫉妬の果て …

5月5日 B・サンドラール著『世界の果てまで連れてって!・・・』 3冊目

生田耕作の本は一冊も架蔵しておらず、格安だったので購入。 生田耕作(いくた・こうさく)(1924-1994) 仏文学者。京都大学名誉教授。 京都府生。京都大学仏文科在学中に、アンドレ・ブルトンの思想に啓示を受ける。 以後、「異端の仏文学者」としてブルト…

5月4日 古書紹介 龍膽寺雄『放浪時代』 2冊目

龍膽寺雄著『放浪時代』(改造社 新鋭文学叢書・古賀春江装丁) 昭和モダニズムの旗手として、戦前の文壇に颯爽と登場し、 消えていった、龍膽寺雄(りゅうたんじゆう)を紹介する。 21世紀初頭の今、龍膽寺雄の作品を読むことは困難である。 このタイトルの放…

5月4日 筑波昭『巣鴨若妻殺し』 読了 1冊目

ネットで買った本を読了。読んだ本は下記の通り。 筑波昭『巣鴨若妻殺し』昭和戦前の最難事件 草思社 初版1987.03.16 筑波昭の著作は何冊か文庫化もされている。 この本はまだ文庫化はされていない。 文庫化されない理由も判ったような気もする。 やはり彼の…