6月16日 古書 窪川稲子著 『素足の娘』(1940)32冊目

イメージ 1

イメージ 2

今回は、戦前の女流作家
窪川稲子(佐多稲子)の『素足の娘』を紹介する。
佐多稲子は1998年10月13日逝去)
この本は1940年(昭和15年)に新潮社から刊行され、
当時、ベストセラーとなった。
今となっては忘れられた作品であるが、
戦前の生活を生き生きと描写している佳作である。

私が所蔵している本は1940年4月の35版であり、
当時相当売れた事を窺がわせる。
この本の元所有者は本を大事にしており、
文房具屋の包装紙でカバーを作り、
そこに購入月日、タイトルを書き入れている。
(検閲を恐れ)本の内容は伏字ばかりだが
元の所有者は、そこに書き込みをしている。
想像で書いたのかも知れない。
元の所有者を考えると面白い。
どこに住んでいたのか?
年齢はいくつなのか?
生活環境は?等々
そんな事を思ったりする事も
古書の楽しみの一つである。

この本に限定されず、
古書というのは、グルグルと回る物だ。
自分が架蔵している、古書群も
今までに色んな国、時代、持ち主を経ており、
今、現時点では、一時的に、
自分が持っているものである。
しかし、諸事情(死等)により、
また、私の手を離れ、
その本が焼失、破棄しない限りは、
私が死んだ後も、何十年もの間(或いは何百年もの間)
読書をする人(所有者)を楽しませる事だろう。
言わば私が持っているのは
仮住まいな様なもので、
永遠に生きる事は出来ないと同じに、
永遠に本を持つ事は出来ない。
そう私は思うのである。

この本はカバー(手製カバー&本付属のグラシン紙)と箱に
収められていた為に、保存状態が良く、
背が茶色く変色している他は真っ白で新品同様である。
装丁は佐藤 敬。
変色が全く無い為に、表紙絵が美しい。
戦前の本といえば、茶色く変色した本ばかりで、
昔の面影(当時の色彩を思わせるもの)など皆無に等しいが、
本来の色はこんな感じなのだと実感出来る本である。
今でも充分に通用するデザインであり、
戦前のデザインのレベルが高い事を証明する本でもある。

 *右が本体。表紙は真っ白であり、
  刊行当時のままの色彩(和裁をしている絵)

  蛇足であるが、この表紙に描かれた娘は
  着物姿である。
  今では着物等というものは滅多に
  着るものでは無くなってきているが、
  戦前まで一般的には着物が多く、
  生活密着しており、一寸したものは
  手縫いで拵えていた。