読書 荒俣宏著『ブックス・ビューティフルⅠ・Ⅱ』

イメージ 1

今回は、荒俣宏
『ブックス・ビューティフルⅠ・Ⅱ 絵のある本の歴史』を紹介する。
本書はちくま文庫から刊行。
元は平凡社から刊行されたもので、その再刊本だが、
1冊になっているのではなく、ⅠとⅡに分けられての再刊。
19~20世紀の英国・フランス・アメリカの挿絵本を紹介した本である。
欧米の挿絵本の魅力を伝えた画期的な本である。
現在は、残念ながら絶版になっている。
プレミア価格をつけている古書店も多い。
再販が待望される本である。

随分昔、この本を初めて読んだ時、確かにわくわくして、
この本に掲載されている本が欲しくなったものだが、
それから年月が経ち、この様に日本で散々紹介されている、
フランスの挿絵本は目垢がついて、近年はそれほど、
購買欲がなくなってしまった。
巷に溢れれば溢れるほど、購買欲はそれと比較して、
減少していってしまう。
食べ物の好みが変わるのと同様、収集の好みもまた変化していく。
古書店の目録、またはネット上で、何度も何度も、
同じ本ばかりを目にすると、またこの本か、*見飽きた、ということになる。
(確かに良い本だが、マニア心はくすぐらない)
そこには購買欲をくすぐるような新鮮さは、もはや無いのだ。
どうせなら、まだ見たことが無い、まだ日本の誰もが
手に取ったことがない、フランスの挿絵本を入手し、
実際に手にとり、眺めてみたいと常々思っている。
本書はいわば入門書、入り口であって、
それが挿絵本の全てでは決してない。
(何も知らないレベル、挿絵本とは何ぞやというレベルならば、
本書は確かに役に立つだろう)
特にフランスの挿絵本について言えば、まだまだ奥が深く、
本書レベルでは、とても語れない。
それほど多種多様な挿絵本がフランスには存在する。
もし、本書などを糸口にして、その魅力に取り付かれ、収集家になり、
それを追求していくうち、当然、本書では物足りなくなる。
本書は飽くまで概略に過ぎない。
日本でよく紹介される、フランスの挿絵本は言わば初心者向きであり、
入門に過ぎず、コアなマニアにはとても物足りない。
武道、将棋、囲碁、書道でいえば、初段レベルにすぎず、初段で、
その道を知り尽くしたとはとても言えないだろう。

ちなみにフランスの挿絵本について述べれば、
フランスの挿絵本の価格は比較的安定しており、一般論を述べれば、
極端な高騰もしなければ、また極端な暴落もしないのではないかと思われる。
日本の古書は99%以上国内のみで取引されるが、
フランスの挿絵本は主にフランス語圏、或いは英国、ドイツ、イタリア、スペイン、
北米、南米の一部など、世界に販路を持ち、いまだに多くのコレクターがいる。
フランスの古書業界はこれらの要素が強みになっていると思う。
これからは徐々にその入手も難しくはなるということは否定出来ないが、
私が生きているうちにはその可能性が大きくはないと思う。
しかし、当然ながら、22世紀にはその入手は今よりも格段に、
難しくなっているのではないかと予想される。

*何故、古今東西、この世の中に不倫や浮気があるのかね?
何故、多くの恋人や夫婦はいつか倦怠期を迎えるのかね?
何故、いくら好物でも毎日食べると飽きてしまうのかね?