読書 十九世紀ヨーロッパファッションプレート/他

「十九世紀ヨーロッパファッションプレート」は
昭和時代に刊行された、ファッションプレートの本。
1980年講談社刊行。岡田譲、伊藤紀之などが書いている。
これ以前には1974年刊行の西洋服飾版画(文化出版局)がある。
他にもあと1冊図書館で見たことがあるが書名などは失念。
この当時日本ではファッションプレートは今よりは
馴染みがある存在では絶対なく、それはこの21世紀の今でも
同様である。伊藤紀之(1940年生)は存命だが
1911年生まれの岡田譲は既に故人である。

私が生まれて初めてファッションプレートを見たのは
1985年の春で銀座のプランタン銀座での催事であった。
そこで私は初めてファッションプレートを見て
この世の中にはこのようなものがあり、
日本にはないものであり、とても綺麗に感じた。
それはファッション雑誌から切り離した
ファッションプレートであったが、将来この自分が
切り離してない、19世紀フランスのファッション雑誌
(装丁済の年単位の合本)を入手するなど
その時点では想像も出来なかった。
ネットが台頭する前の昭和の時代は外国から個人輸入
物を買うという概念はほとんどの日本人は持ってない。
今から思えば、当時、そこで見たファッションプレートは
たいしたこともない品だが、当時はとても珍しく思えた。
21世紀に入り、ネットでフランスの古書を買い始めた頃、
(今は営業してない)ベルギーの古書店(ネット販売のみ)に
問い合わせをした際、状態が良い19世紀フランスの
ファッション雑誌があるが買わないか?と言われ、
それから19世紀フランスのファッション雑誌
(装丁済の年単位の合本)を買い始めた。
最初はその美しさと繊細さにとても感動したものだったが、
集めていくうちにその感動も段々薄れてきてしまう。
いつの時代でも、19世紀でも21世紀でも、フランスや日本、
どこの国、地域でも女性が求めるものは不変である。
それは19世紀フランスのファッション雑誌を実際に
手にとってみると顕著に見て取れる。

本書にはこのようなことが書かれている。
本書に収められたファッションプレートは1846年~1886年
40年間に及び1870年代に集中、la novitaなどで原画、
彫刻はパリなので従ってヨーロッパのファッションプレート
表わしているとみていいだろう、と。そんなことが書いてある。
(この辺はうろおぼえ。記述は正確であるとは言えない。
記憶違いの可能性が有り)
プレート所有者の柳俊一は30年前荒廃した東京神田の街角
路地裏で店舗を構える巌松堂で入手。今日まで大事に保存された
ことに敬意を表すとともに今回の出版に快くご協力いただいた
厚意に厚くお礼を申しあげたいというようなことが書かれ、
またこんなことが書かれている。
当時の人々の憧れ、願望を視覚化し、それの情報伝達を目的とした
ファッション画である、と。
何故、フランスでもなく、イタリアのファッション画なのかは
当時それくらいしか入手が出来なかった可能性がある。
ネット通販が存在しない、昭和の当時、このような外国の産物は
入手が簡単でなかった為、日本国内にあり、撮影が出来るもので
間に合わせたのだろう。本書が出版された、昭和時代と今の2023年
では現状がまるで違う。入手が簡単ではなかったという、
その証拠になるような過去の遺物(過去の産物)みたいな本だと言える。

「ファッション・プレート全集 3 19世紀中期」
1983年3月文化出版局刊行。
ファッション・プレート全集として17世紀から20世紀初頭までの
全5巻として昭和時代に刊行された。
上記の「十九世紀ヨーロッパファッションプレート」の刊行よりも
少し後の刊行。本書ではイタリアではなくファッションの本場、
ファッション大国のフランスの著名なファッション誌の
ファッションプレートで構成されている。
日本語の解説、記述は少なく概要しか書かれていないので
正直物足りなく感じてしまう。
「ファッション・プレート全集」に収められたファッション・プレートは
(原画の複製=ファッションプレート)の複製なのでやはり本来の
ファッションプレートとは質感もかなり違う。
日本では19世紀のフランスのファッション史、ファッション雑誌に関し、
全てを網羅するような詳細な研究書はまだ刊行されていない。
結局はフランス本国またはUKなどで刊行された研究書に
頼るしかないのが現状である。

ネットでの19世紀フランスのファッション雑誌の
ファッションプレートの記述に関し、間違いがとても多い。
鋼版画なのに、ポショワールだの銅版画だの石版画だの、
逆に石版画を銅版画と勘違いしたりしている。
またスペインのファッション雑誌の鋼版画のファッション
プレートを、フランスのファッション雑誌の銅版画のファッション
プレートと書いていたりする。
1年分の合本を2年分の合本と勘違い(ちなみにフランスでの
雑誌刊行は18XX年10月~18XX年9月までで1年分)
挙句の果てには19世紀を17世紀と勘違いする始末。
印刷を手彩色と書くし、印刷と手彩色の見分けがつかない始末。
ファッションプレートの全てが銅版画ではないし
手彩色でもないのに。
確かに19世紀フランスのファッションプレートでは
手彩色で彩色された時期もあるが、その期間は長くはなく
19世紀の全期間でもありません。
「銅版画に手彩色」という常套句を言い張る人が多すぎる。
実際に銅版画を見たことがないのだと思う。
ただネットではそういう記述が多数見られるので
本気にして思い込んでいるだけに過ぎない。
こういう間違いをする人は古書や美術や版画や歴史は決して
身近なものではなく見分けがつかないのだろう。
それに状態が悪いものが多く特に装丁に大きなダメージが
あるものが殆どである。