漫画 楳図かずお著「洗礼」その他

小学館文庫(全4巻)
1&2巻1995年11月10日初版第1刷発行 560円
3&4巻1995年12月10日初版第1刷発行 560円

先日、雑記「女の化粧と髪型」という記事を書いて
その記事の最後に楳図かずお「洗礼」についてちょっと書いてみた。
今まで本ブログには楳図かずお漂流教室』のことを書いたことがある。
漫画家楳図かずおは今まで天才だと思ってきたし、
これからも私は天才と思い続けるのは間違いがない。
楳図かずおは天才だし中島みゆきも天才だし、
彼らの代わりはいなくて、どんな人間でもあっても、
この地球上に80億の人間がいても、彼らの代わりには絶対成れない。

今日はその楳図かずおの「洗礼」について書く。
先日も書いたことだが、この洗礼は女の美へ憧れ、加齢して
醜くなることへの恐怖、美しさを失うことの恐れ、女の嫉妬、
女の平凡な幸せを求める女の姿が描かれている。

主人公は上原さくら小学四年生。さくらの母は昔美貌の大女優だった。
加齢し、醜くなった、さくらの母は自分の娘の脳と自分の脳の
入れ替え手術をし、さくらの母は娘の小学4年生の上原さくら
として生きることになる。
さくらの担任の谷川先生の女、妻になりたいが
谷川には既に妻の和代がいた。
さくらは和代が邪魔で憎くてしょうがない。
おまけに谷川夫婦には赤ちゃんまでいるのでその憎さも倍増する。
谷川と教え子の集まりの時にスープに腐敗物を入れて
体調を悪くさせる。その原因はスープをつくった和代のせいにされ、
さくらはまんまと谷川の家に入り込むことに成功する。
さくらはそれから和代を追い出し、離婚させるべく、執拗で陰険な
嫌がらせを和代にすることになる。ここからは女と女の戦い、
谷川という一人の男をめぐって修羅場になる。

さくらは和代にゴキブリおかゆを食べさせ、和代が電話しようとすると
その電話のダイヤルにカミソリを仕込んであり、和代に怪我をさせる。
和代にロープで首を括るように強要し、和代の母のコートにムカデを仕込み、
そのムカデに驚いた、車を運転中の和代の母は交通事故死をする。
次はあの有名なアイロンの場面。
さくらは和代の股間に熱したアイロンを押し付けようとする。
そこでさくらは和代にこう言う。
「あなたの一番大切なところを焼きつぶしてやる!」(アイロンのコードが
はずれていたというオチがある)
そればかりか、さくらは和代を装い御用聞きに電話する。
さくらは「前から好きだったの。めちゃくちゃされたいの、
待っているわ」と電話で御用聞きに言う。
それを本気にした御用聞きは和代が誘ったものだと思い込み、和代に迫り、
和代はレイプされそうになる。
またさくらは憧れの谷川と新婚夫婦のように一緒に風呂に入ったり、
(谷川が酔いつぶれて帰宅した時は)まるで前夜に泥酔した谷川がさくらと
一線を越えたと勘違いさせるような言動をさくらがしたり、
谷川がタバコを吸うのを見て、自分もこっそりタバコを吸ってみたり・・・。
このような嫌がらせの描写はアメリカ映画の「エスター」を彷彿させるが
エスター」よりも残酷で非情である。

楳図かずおはそもそもは少女漫画家で、この「洗礼」も
「週刊少女コミック」(小学館)に1970年代中期に連載されていたものだ。
先日の「女の化粧と髪型」という記事の最後に「洗礼」には女の嫉妬や
好きな男を得るためには手段を選ばないという究極の女心が描かれていると書いた。
やはりこういう漫画は少女漫画向きなのだろう。
男よりも女のが精神年齢の発達が早いと言われている。
おませな女の子という言葉があるように、
子供ながら大人びているのは大抵は女の子だ。

高校の時は少女漫画をよく読んでいて、楳図かずおの怖い少女漫画も読んでいた。
それに大和和紀の「はいからさんが通る」も当時単行本で全巻読んだ。
また楳図かずおとは作風が違うが、当時漫画「みんなあげちゃう
(処女いりませんか?)」が連載を始めて、そこからその作者の弓月光の漫画に
興味を持ち、単行本化された少女漫画も全巻読んだ。
みんなあげちゃう」というのは浪人生の男が玄関のドアをノックされて、
ドアを開けたらセーラー服を着た、かわいい女子高生が「処女いりませんか?」
と処女の押し売りをする序盤の場面ががあり、そこから始まる、
エロティックコメディ漫画作品。

みんなあげちゃう
(記事投稿時には視聴可能)
https://youtu.be/QeN0KE9nmcs?si=HJ_bFYRhNqLe2DAs

弓月光はこの漫画では理想の女を描いていると思うし、
三浦みつるの「The・かぼちゃワイン」にしても
三浦みつるは理想の女を描いていると思う。

弓月光 画業50周年プロジェクト!! 50周年の感謝を貴方に
http://grandjump.shueisha.co.jp/amai/

三浦みつる『The かぼちゃワイン』新作短編のクラウドファンディングがスタート
https://www.itmedia.co.jp/ebook/articles/1506/27/news010.html

弓月光楳図かずおと同じくそもそもは少女漫画を描いていた。
だから両者ともかわいい女を描くのがすごい上手い。
少年漫画と少女漫画でも性差があり、テーマや描かれるものが違う。
少年漫画は基本は(対象年齢が低いほど)恋愛要素はまず出ないが、
少女漫画は基本恋愛をテーマにしている場合が多い。
それは少女漫画を原作とした、女向けの邦画に顕著に現れている。

映画『黒崎くんの言いなりになんてならない』予告編
(記事投稿時には視聴可能)
https://youtu.be/YO9-874GAAI?si=BozcJmVGftj7Ncq2

溺れるナイフ』本予告
(記事投稿時には視聴可能)
https://youtu.be/nfFrNuNMSpA?si=PsG7pjuDmB-Cq3cs

覚悟はいいかそこの女子。予告編
(記事投稿時には視聴可能)
https://youtu.be/wJA5QMot-J4?si=Fim4QC41kW4QujTm

『おんなのこきらい』予告編(New Version)
(記事投稿時には視聴可能)
https://youtu.be/gvBFMup-9zw?si=DPEj2TspDxHh4eCB

少女漫画にもハーレクイン物語も結局は理想の恋愛を描き
白馬の王子(金持ち&イケメン等)と出会い、結ばれるのを描くし、
また2人のイケメンな男子が自分を奪い合う過程を描くし、
こんな私でも、もしかしたらこんな男性がある日突然現れるかも?
みたいな世界観を描いている。

上記の予告動画で最後の『おんなのこきらい』は原作があるのかと
思っていたら見つけることが出来なかったが、
「かわいい・・・女の子はそれだけで生きていけるのです。
生きる価値があるのです」という予告の最後のセリフのように
これは現代社会に生きる日本の若い女たちを表現していると思う。
かわいいは正義&イケメンは正義という言葉通りに社会では
容姿、外見が重要視され、それは免罪符にもなり、それに翻弄される。
主人公がビッチ呼ばわりされるが、それが男とは真逆なわけで
男の場合は賞賛される。
多数と交際や性行為をするのは男女では意味合いが真逆である。
簡単で判りやすく言えば処女は尊ばれ、童貞は尊ばれない。

私が持っているバージョンの洗礼の表紙は怖くはない。
この洗礼にはいろんなバージョンが存在するが、一番怖いと思う表紙は
秋田書店の秋田コミックスの全3巻のバージョンだ。

楳図かずお著『洗礼』をこわごわ読む
https://ameblo.jp/hituzou/entry-12724597970.html

洗礼
http://sanshimai3.blog4.fc2.com/blog-entry-336.html

洗礼 楳図かずお
http://symphony007.blog96.fc2.com/blog-entry-5.html?sp

『洗礼』の日次
https://hangyo.sakura.ne.jp/umezz/senrei1.htm