初恋とはナンゾヤ 林忠彦撮影・著『カストリ時代』Ⅰ

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今回は、1987年に朝日文庫から刊行された、
林忠彦撮影・著『カストリ時代』を紹介する。
(以前から紹介しようと思っていた)
1987年に私が新刊で買ったものである。
当時、私はこの本の中に収められている写真を
興味深く眺めたものだった。
勿論、今でさえもこの時代は私には興味深い。
同じ日本とは思えない程の異世界は広がっている。
林忠彦は今となっては貴重な写真を多く撮影している。
復員兵、浮浪児、太宰治などの文士、
それに(かつては小林トシ子も在籍していた)
日劇ダンシングチーム・・・。
検索して判った事だが、林忠彦の写真展「カストリ時代」を
奇しくもつい先ごろまでやっていたようである。
こういうシンクロを私はよく体験する。
この時期の映画として、私は「麻雀放浪記」を思い出す。
私が多感な十代の頃にTVで放映した事があって、
強烈な印象を残したのだ。
映画の中で流れていた、岡晴夫の「東京の花売娘」(1946)は
私の好きな歌となった。

戦地から生還を果たし、懐かしき母国日本の土を踏んだ復員兵。
外地から、命からがら引き上げてきた、引揚者達。
帰って来られたのは奇跡である。
或る者は死に、或る者は、現地に残留した。
命が有るだけマシであった。
鬼畜米英と戦中時には言われていた占領軍(否進駐軍)が
帝都東京を闊歩している。(勝った側は気ままなもんだ)
女達は、いつの時代でも、どこの国でも変わり身が早い。
いつだって生き(残)る為に有利な側につく。(それは本能なんだろう)
生きていく為なら、食料が豊富にある占領側に付くのが生き易い。
餓死するか、身体を売るか、それとも占領軍に抱かれるか・・・。
(*1947年山口良忠判事が闇米を拒否し、餓死。
生きていく為には、どんなことでもしないと生きていけない時代であった)
戦時中も地獄なら、敗戦後もまた地獄。
しかし今とは違い、人には明日への希望だけは持っていた。