おすすめの本 事実は小説より奇なり 神子 清 著『われレイテに死せず』22冊目

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第2次大戦末期の昭和19年11月、
危機に瀕したレイテ島を救援すべく陸軍玉兵団1万1000名が上陸、
著者神子清の所属する歩兵第57連隊は日を経ずして遭遇戦にはいった。
すさまじい敵弾の嵐の中、演練をともにしてきた戦友たちを
次々に失い部隊はついに2週間で壊滅してしまった。
指揮系統の断たれた死のジャングルで、
敗残兵の一群は必死の応戦のはてにいつか遊兵と化し、
生きるための壮絶な旅をはじめる・・・・。

レイテ島を脱出した神子率いる4人が
小舟をあやつり辛うじて上陸したのは
実り豊かな「肉の島」、メデリン島だった。
戦場を離れた偸安の日々―神子はボルネオの新天地に
日本人による理想郷建設の夢を語りつづけた。
だが彼らの行く手に立ち塞がるネグロスの山中には、
飢餓と敵襲、戦友の無惨な死、そして人肉食が待っていた。
主義思想のとどかぬ極限状態のジャングルで
個々の人間がいかにして生き抜いたか。
投入兵力8万5000名、うち戦死者8万1000名という
悲惨な戦場における人間存在の明暗を
ダイナミックに描破した不滅のノンフィクション!
第57連隊の下士官だった著者が
悲憤の体験を綴ったサスペンス溢れる異色の戦記。
ピュリツァー賞作家J.トーランド氏絶賛の名著、待望の文庫化。
(裏表紙からのレビューからの抜粋)

私は様々な分野の本を読む。
歴史文学芸術ドキュメント等・・・。
勿論、今回紹介するようなドキュメントも
数え切れないほど、読んできた。
また戦記ドキュメント、戦記文学等も今まで数々読んできた。
(有名なものでは、光人社のよもやまシリーズや真空地帯、野火等々・・・)
今回、紹介する、『われレイテに死せず』は
今まで読んだ戦記ドキュメントの中でも卓越しており、
3回は読んだと記憶している。
ただの戦闘の物語ではなく、手記を書いた、神子伍長と、
その戦友達との壮大かつ奇妙な冒険譚である。
事実は小説より奇なりと言う。
これほどの冒険をし、死線を彷徨し、壮絶な経験をした日本人は
そうは居ないだろうさえ思う。
あの過酷な戦場でさえも・・・。
米軍との戦い、原住民との戦い、飢餓との戦い、
また友軍とも別な意味で戦わなければならなかったのである。
このような想像を絶する物語は映像化される事はない。
それが私には残念ではあるが、どんな名監督をもってしても、
どんな好条件でも、この物語を再現するのは不可能に思える。

私がもし軍隊にいるならば、神子伍長のような上官に恵まれたいと思う。

1988年ハヤカワ文庫NFより刊行