読書 『西洋製本図鑑』

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西洋製本の歴史、道具と材料、具体的な製本の工程、
修復にいたるまでを、全ページフルカラー写真で詳細に図解。
原著は、スペインで出版されたのち、フランス語版・英語版・ドイツ語版・
イタリア語版が発行され、日本語版発行が待たれていた。
『古書修復の愉しみ』の翻訳者と監修者が組んで
日本語版の発行となった。
ルリユールおじさん』(いせひでこ 著 理論社 刊)などで
昨今注目される西洋製本技術と親しめる一冊。

ルリユールの歴史や、古い伝統的な技法、金箔押しや革モザイク、
本の修復などが総合的に紹介される機会はきわめて少なく(中略)本書は、
まさにそのような期待にこたえる一冊である。
(本書「日本語版刊行にあたって」より)

目次
第1章 製本の歴史
第2章 道具と材料
機械/道具類/箔押しの道具/材料/仕事場
第3章 製本
本の各部の名称/くるみ製本/綴じつけ製本
第4章 シュミーズと箱
本と書類の保護
第5章 装飾
ロール箔による箔押し/タイトルを組む/空押し/箔押しの準備/金箔押し/
箔押し機による箔押し/小口の金つけと模様刻印/革モザイク
第6章 修復
古書の修復/マーブル紙
第7章 ステップ・バイ・ステップ
布装本/背バンドつき半革装/ポートフォリオ/夫婦箱/小口革つきスリップケース
/丸背背革装の夫婦箱/表紙内側の折り返しと表紙の縁への金箔押し/レリーフ式モザイク
ギャラリー
参考文献
(紹介文より抜粋)

今回は、2008年12月に雄松堂出版から刊行された、
ジュゼップ・カンブラス著 市川恵里訳 岡本幸治 日本語版監修
フルカラー160頁で構成された、『西洋製本図鑑』を紹介。
なかなかよく出来ている本であるが、
装丁家にとっては、当然ながら物足りない内容であろうが、
装丁を本格的に学んだ経験が無い者や
装丁とは何ぞやと思う者には、
”装丁の概略”を知るには、良い内容かも知れない。
我が国には、このような装丁に関する本が
欧米と比較して、異常に少ないからである。
「このように本が作られていくのだ」という事を知るには
なかなか良い内容ではないかと思う。
我が国では、このような本が、本当に誇張ではなく、
異常なほど枯渇しているのが現状なので、
本書が日本語に翻訳されて、刊行されたことは喜ばしい事である。
装丁家や今装丁を学んでいる者や本格的で古典的な洋古書コレクターを除き、
我が国では、装丁を知る者は皆無である。
悲しいことに、西洋式装丁が近代化の途中で定着する事がなく、
そのまま機械製本になってしまった、我が国では
装丁とはただの本のカバーデザインをすることだと思われている。
あのただの紙一枚のデザインをする事のみが装丁の仕事だと思われている。
また、それがまかり通っているのが現状である。
”『ルリユールおじさん』(いせひでこ 著 理論社 刊)などで
昨今注目される西洋製本技術と親しめる一冊”
という説明があるが、このような注目は、結局は永続的なものでも、
持続するものでもなく、いつだって、ただの一過性に終わってしまう。
どうすれば、本書で書かれている装丁に魅力を感じて、
その興味を永続出来るか?
それは、装丁という、美しい工芸作品を、”実際に間近で見て”
それを、「本当に美しい」と思い、「どうすれば、そのように作れるか」と思うか、
思わないかの差である。
私は初めて、本書で書かれているような、ルリユールを見、
なんて美しいのだろうかと感動したのである。
(それからルリユールに興味を持ったのである)