読書 武田専著「学徒兵らくだ君」

学徒兵らくだ君
脱線学徒兵の人間讃歌
光人社NF文庫
ノンフィクション
1997/11/13

不器用で虚弱ながら、
ひとこと口数が多い正義漢。 
兵隊には全く不向きな「らくだ2等兵」が、
過酷な生活の中で人間らしく生き抜くために、
上官達と繰りひろげる痛快無比の軍隊物語。
不適な境遇に置かれても柔軟に対応し、
根性と気骨を以って兵隊たちの心をつかんでいった
学徒兵をコミカルに描く話題作。
(本書紹介文より抜粋)

本書の序には「私はたまたま或る学徒兵の手記を手に入れた」
とあり、自分の経験ではないという体裁をとってはいるが、
本書に書かれたことは自分の経験を元にして書かれたものと
思われる。今まで聞いたこともない、想像を超えた兵隊の
物語である。大西巨人の「神聖喜劇」みたいな感じにも思えるが、
「学徒兵らくだ君」は身体は虚弱であり、兵士には向かず、
軍務へのやる気もなく、出来ないことばかりの連続であり、
そのために常に上官に殴られるままである。
何を言ってもどんなに殴っても、らくだ君は出来ないままなので、
上官たちは最後には彼を殴りもせず、叱責もせずに放置する。
(らくだ君を殴っても叱責してもどうせ出来ないし労力の無駄な為)
このくだりはまるでコメディであるし、「学徒兵らくだ君」は
軍隊の中で要領良く立ち回り、階級も上がっていき、
最後には軍曹になり終戦を迎える。
著者の武田専は戦後、大学医学部に入り精神科医になった。
今でも神奈川県には彼の創業した病院が残っている。
武田専は故人になってしまったが、彼のような破天荒な兵士が
いたことに私はとても驚いた。この話は映画向きだなと思う。
どこまでが創作なのかは判らないにしても、
(全部が創作でもないだろうし)型破りな学徒兵がいたものである。