おすすめの本「明治のお嬢さま(角川選書)」

黒岩比佐子 (著)
角川学芸出版
2008/12/10
単行本

鹿鳴館で踊った母をもつセレブの令嬢たち。
明治後期に社交界デビューしたお嬢さまが、
自分の才能や個性を生かせる道は限られていた。
身分が高いほど束縛され、結婚相手も家格の釣り合いで
決められてしまう。そのお嬢さまが頼れる武器は
「美貌」。社会の矛盾に悩み、「良妻賢母」という
理想に縛られながら、美を求めてお嬢さまたちは
涙ぐましい努力をする。女性誌や新聞記事から
明治のお嬢さまの本当の姿を明らかにする。

〈目次〉
はじめに
第一章 華族女学校──お嬢さまの学校生活
憧れの令嬢生活/元祖お嬢さま学校/お嬢さまの成績と
「たしなみ」/お嬢さまの礼儀作法/学習院序学部に

第二章 美人の品定め──結婚適齢期のお嬢さま
男袴から海老茶袴へ/お嬢さまの運動会/運動会の
「美容術」/嫁探しの授業参観/美人コンテスト/
男たちの本音/「くろうとの女」対「しろうとの女」/
美は権力を呼ぶ

第三章 明治の“新旧"の上流階級──さまざまなお嬢さま
皇族・華族・士族・平民/五つの爵位のランキング/
爵位の継承は男系/爵位を望んだ富豪たち/
二十四、五歳で「老嬢」

第四章 家の存続と「妾」問題──お嬢さまの母の世代
「蓄妾率」七〇パーセント/妾の廃止をめぐる議論/
明治天皇の皇后と側室/徳川慶喜の妾と華麗な閨閥/
妾をもつ父、もたない息子/鹿鳴館とバッスルスタイル

第五章 大名華族と家政──お嬢さま一家の生活水準
大名華族vs.公家華族/某伯爵家の一年の支出予算/
大名華族の食事/大がかりな行事や婚礼

第六章 広大な御殿と付き人──お嬢さまの生活環境
ホテルや公園になった華族の邸宅/部屋数が七十、
使用人が百五十人/パリでも美人の皇族妃/妻妾同居/
貴族は猫舌/大磯や日光の別邸/お嬢さまのお出かけ

第七章 雑誌に登場する女性像──「見られる存在」のお嬢さま
近代日本の理想の女性像/セレブが登場するグラビア/
人気企画「令嬢鑑」/女学生バッシング/化粧に熱中する令嬢たち
/美しく“化ける"/「痩せたい」願望/遠藤波津子の美顔術/
髪をなびかせるハイカラ女学生/流行の髪型/
商品カタログが謳う最新流行/「美」にとらわれるお嬢さま

第八章 日露戦争という体験──お嬢さまのボランティア
“戦中派"としての意識/「篤志看護婦人会」の設立/採用条件は
「美貌でない者」/出征軍人への慰問袋/気高く美しい姿

第九章 上流階級の結婚事情──お嬢さまから貴婦人へ
「若き婦人の男子に対する心得」十カ条/十四歳で婚約した
鍋島伊都子/皇族妃になるための儀式/夫が十年間不在だった九条武子
/「筑紫の女王」柳原白蓮の恋/大倉財閥に嫁いだ伯爵令嬢/
結婚媒介所の流行/美をアピールする写真/写真で射止めた玉の輿
(本書紹介文より抜粋)

本書は著者が当時の雑誌や出版物を通し、明治期のお嬢様像、
令嬢の実態について書かれたもので、本書を読めば、大体は
こんな感じなのかと把握が出来る。
本書の批評についてだが、著者は現代のフェミニズム
何かと言えば持ち出すという意見も多々みられるが、
それを差し引いてもなかなかの好書だと感じた。
俗に言うような、世間で語られがちなお嬢様と本書で述べられる
真の意味でのお嬢様、令嬢とは本当に異なり、その差異には
驚かされた。お薦めの本。