映画56 カルト映画 『パフューム』(2006 ドイツ)

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世界45か国で発売され、1500万部の売上げを記録した
パトリック・ジュースキントのベストセラー小説を見事に映画化。
舞台は18世紀のパリ。悪臭立ちこめる魚市場で
一人の子供が産み捨てられる。
名をジャン=バティスト・グルヌイユ。
グルヌイユは生まれながらに体臭がなく、
神が彼に唯一与えたのは、あらゆるものを嗅ぎ分ける
驚異的な嗅覚だった。
やがて彼は、天才香水調合師となり、
世間を驚かせる芳香を生み出していく。
時を同じくして、パリを震撼させる連続殺人事件が発生。
被害者はすべて若く美しい娘で、髪を刈り落とされた
全裸死体で発見されるのだった…。
犯罪史上最も純粋な動機が彼を狂気へと駆り立て、
そして物語は、かつて誰も目にしたことのない
驚愕の結末へと向かっていく…。
(映画紹介文より抜粋)

今回は、『パフューム』(2006 ドイツ)を紹介。147分。
原作を読んだことがある。
よくぞここまで映像化出来たものだと感心する。
また原作に忠実に製作されているので、大変好感が持てる。
映像はどこまでも美しく、とてもリアルである。
18世紀のパリ、フランスを見事に映像化しており、
時代考証もかなり考えられている。
この辺は日本映画も見習って欲しいものである。
悪臭のパリ、どこまで不潔な街並み、
画面からは悪臭は出る事は無い。
しかし、相当な悪臭だと言う事は容易に想像出来る。
また人々がリアルに描かれている。
民衆の着ている服は襤褸で汚く、当時はどんな時代であったのか、
当時の衛生観念がどんなものなのかを教えてくれる。
それに民衆の前での刑の執行はシーンはとてもリアルである。
刑の執行がよく見える良い場所の奪い合いは付き物だし、
それによって小競り合いのシーンさえ有る。
民衆にとって、娯楽でしかない刑の執行を見ようと
建物の屋根まで上るシーンもしっかり撮影されている。
ラストシーンにはエキストラが700人余りが出演したと言う事だが、
それだけリアリティを追求した映画である。
この作品は後年カルト映画と認識される事だろう。
これほどの映画を作り上げたのは偉業と言い様が無い。
カルト映画と書いた通りに、決して一般受けはしない映画である。
しかし、この映画は表層のみではなく、本質を見抜く人々により
永遠に語り継がれていく事だろう。
それほど衝撃的で、猟奇的な映画である。
上記の映画紹介文を読むと、ただの連続殺人事件の映画作品に
思えるかも知れない。
しかし、この映画はそんなステレオタイプな単純な映画ではない。
究極の匂い、究極の香水を追求した、一人の男の物語である。
この映画のラストシーンでは、男が作った究極の香水の効果により
民衆が恍惚となり、我を忘れて、乱交を始める。
このシーンこそ、男が作った香水の魔力が表徴されている。
この映画の予告編で「究極の香水に世界は平伏す」という
ナレーションの通りである。
147分という比較的に長い映画であるが、
全く長いとは感じられない程、私はこの映画に引き込まれた。
それほどの魅力が有る映画であった。
また、映画で使われている音楽も素晴らしい。
匂いを映像で伝える事は不可能ではある。
そんな批判も有る事は事実である。
しかし原作の小説にしても匂いを伝える事は出来ない。
ただ一つ残念で有った事は、フランスが舞台の映画であるのに
使用言語が英語で有った事である。
この事は、映画マリーアントワネットでも同様に感じた事である。
やはりフランスが舞台なので、英語では全く感じが出ないのである。
映画興行の戦略から英語を使用したかも知れないが、
やはりフランスが舞台で有るので、フランス語を使用して欲しかったと思う。

*フランスには昔から孤児が多かった。
舞台となる18世紀も同様である。
時代が下るが、私が所蔵している、19世紀のフランスの古書に、
このような書き込みがある。

「内務大臣より褒美として、ディエップ(*フランス北部港町)の孤児
H.M..GUIMELへ贈られる。1861年6月」

その本は装丁が立派な本だが、この様な紆余曲折が有ったようだ。
今、この本は1861年に内務大臣からディエップ(フランス北部港町)の孤児
H.M. GUIMELに渡り、21世紀の今、私の手元にある。
私の手に渡るまで、一体ドラマが有ったのだろうか?
本は何も語らないが、どんな物語が有ったのか興味は尽きない。
本の歴史は、蔵書家の歴史、また人の歴史でもある。
(*2007年3月30日に追記)