『林 由紀子銅版蔵書票集 「プシュケの震える翅」出版記念個展』Ⅱ

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先日の7月3日から、東京・高輪台の啓祐堂ギャラリーで開かれている、
林由紀子の蔵書票の個展に7月10日に行って来ました。
都営浅草線高輪台駅を降りて、
少し歩くと啓祐堂ギャラリーに到着します。
書肆 啓祐堂に併設されたギャラリーであり、
書肆 啓祐堂のご主人、杉本氏が運営しているものです。
7月10日は銅版画・蔵書票作家である、林さんが在廊しており、
作品への熱い思いなど、色んなお話を聞く事が出来ました。
林さんは、今後は海外からも蔵書票の注文を受け、
制作をしていきたいと語っていました。
今回、私が買った蔵書票は、「女王たちは蜂蜜パンを食べる(ハート)」
(2010年制作 E.A.)で、一目惚れしたので、これを選びました。
(票主は江副章之介氏であり、今回刊行された林由紀子銅版蔵書票集
「プシュケの震える翅」の刊行元のレイミアプレス代表です)

林さんの蔵書票はどれもが大変素晴らしいのですが、
(女性作家で、エロスを醸した雰囲気のものが中々無いのですが)
エロチックで、トランプを模しており、また描かれている女の髪を
アップしているのが何とも良く感じて、これに決めました。
本当に選ぶのが苦労するほど、どれもが凝った、練りに練った構図で、
卓越したセンスで、傑作ばかりです。(林さんはとても良いセンスをしています)
女は蔵書票ではよく描かれる題材なのですが、髪を下ろしているものばかりで、
髪をアップしているのはとても珍しく感じたのです。女の髪はエロスを感じます。
林さんは、とても素敵な人で、素晴らしい才能を持った方です。
これからも良い作品を作って頂きたいと思いますし、私は大変期待しております。
懇切丁寧に説明をして下さり、大変感謝致します。

江副氏が在廊していたならば、是非お話を聞きたかったのですが、
7月10日はあいにく在廊ではなく、誠に残念です。
江副章之介氏は日本の蔵書票界の重鎮であり、極めて精力的に
活動しており、日本の蔵書票界の発展には欠かす事が出来ない人物です。

日本において、蔵書票というのは、知名度が有るとは言えません。
しかし多数の作家が蔵書票を制作しております。
その中で、注目すべき、優秀な若手作家を挙げるとするならば、
私は以前記事を書いた、中嶋清八さん、それに、
(今回お話を伺う事が出来た)林由紀子さんの両名を選びます。
両名共、繊細かつ優美であり、個性溢れる、独特の世界観を構築しており、
その完成度は極めて高いと言えると思います。
両名とも優れた技術を持ち、感性も素晴らしく、真摯に作品に取り組んでおります。
人の好みというのは、様々だと思いますが、
お二人の感性は私の好みに合致しています。
色んな蔵書票作家が居ますが、本当に自分の好みと合致した、
感性を持った作家、作品に出会うのは難しく、正に僥倖だと言えるでしょう。
これからの日本の蔵書票界に無くてはならない逸材であり、
また大変期待出来る存在だと私は確信しております。

今回、林さんから、興味深いお話を伺うことが出来ましたが、
書肆啓祐堂の杉本氏からも色んなお話を伺うことが出来ました。
杉本氏は書物や蔵書票に造詣が深く、好々爺、博識で紳士的な人物です。
書肆啓祐堂は、とても品の良くかつ選び抜いた古書が並んだ店です。
中でも目を引いたのは、フランス文学の生田耕作澁澤龍彦等の古書です。
興味有れば、行ってみてはいかがでしょうか。