ゴヤが見た激動の時代 映画『宮廷画家ゴヤは見た』

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原題「Goya's Ghosts」「Los Fantasmas de Goya
2006年アメリカ・スペイン制作。114分。
とても素晴らしい映画であった。
2時間近い、長い映画であるが、長さを感じることなく映画を堪能出来た。
18世紀末~19世紀初頭のスペインを忠実に再現した
映像を見る機会は殆ど無いので興味深く見ることが出来た。
スペインはゴヤに限らず、ディエゴ・ベラスケスエル・グレコ
ミロ、ピカソ、ダリなどの芸術家を生んだ国だ。
時代考証は大変良く出来ていて、スタッフには大変優秀な人材を
集めているのだろう。

ゴヤが工房で銅版画を刷るシーンがあるが、
銅版画を刷るシーンもなかなか見ることが出来ないので、
これも興味深く見ることが出来た。
銅版画は今でも作られているが、昔と比較しても
制作方法には殆ど違いはない。
タイトルのように、ゴヤは殆ど傍観者として、
観察者としての位置であって、主役はロレンソ神父や
囚われた裕福な商人の娘イネス・ビルバトゥアである。
異端審問は欧米で行なわれたが、特に酷いにはスペインである。
スペインの異端審問はすさまじい。
ロレンソ神父の役のハビエル・バルデムやイネス・ビルバトゥア&アリシア役の
ナタリー・ポートマンの演技が素晴らしい。
ロレンソ神父は、あの「No Country for Old Men」の殺人者を演じた
あのハビエル・バルデム。あの強烈な個性を持った殺人者を
忘れる事は無いだろう。本映画でも狡猾で好色な神父を演じている。
正に適役だと思う。他の役者にはとても出来ない役どころである。
あの神父の身の毛もよだつ嫌らしさ、狡猾さを見事に演じて見せた。
(正直、あれ程狡猾で嫌らしい、金にも女にも汚い、教会関係者とは
絶対関わりたくない、ヤクザよりも酷い)
ダンプ松本は悪役時代、近所で石を投げられたという話があるが、
ハビエル・バルデムも日本に住んでいたら、石を投げられるレベルであって、
それほどまでに本映画では、誰もが嫌悪感を持つであろう人物を演じている。
イネス・ビルバトゥア&アリシア役のナタリー・ポートマンは裕福な商人の娘、
狂人、娼婦までこの映画では様々な演技を見せている。
特にすさまじいのは、狂人の演技であり、迫真の演技である。

本映画でも、国王ですら、囚われたイネスを即座に解放することが
出来なかったほど、この当時の教会の権力は絶大であり、
誰もが逆らうことが不可能で、何一つ異論も挟めない。
教会に逆らったら、命が危ない。それをあのフランスの思想家サドは
自ら実践して見せたのだ。彼の反骨精神は誰も真似が出来ない。
ロレンソ神父が処刑されるシーンでガロットが用いられている。
(写真参照。「モネスティエ著 図説死刑全書から抜粋」)
私は(スペインの植民地であった)*フィリピンのガロットの処刑写真を
以前、どこかで見た覚えがある。ちなみに今のフィリピンは
アメリカにべったりなので、処刑方法はアメリカのように電気椅子である。

スペインは昔大国であり、世界中に多くの植民地を作った。
今でもその影響が大きく、世界中にスペイン語話者、スペイン語圏の国が多い。
スペインは国際社会では決して目立つ事は無いが、イギリスやフランスに
囲まれた地理的条件もあって、軍事大国であり、イージス艦も数隻保有している。
日本は世界のATMでお財布で、金を出さなくても叩かれ、
金を出しても嘲笑される、土下座外交を相変わらず行なっているが、
スペインのように、外交で要領良く立ち回って欲しいもんだ。
金を出さず、堂々と意見を言い、決して馬鹿にもされず、誰にも何も言われない、
そんな賢い立ち回りを願うばかりだ。今の日本は金を出すだけの無能の国、
(それだけしか世界に期待されていない)何を言われても謝罪し、
賠償し、他国の言いなり、おひとよしで、腰抜けの国だと世界から思われている。

*追記
フィリピンで昔行なわれたガロットによる処刑の写真を見つけたので掲載する。