ヘンリー・ミラー著 『セックサス』 34冊目

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今回、紹介するのは、
ヘンリー・ミラー
『セックサス 薔薇色の十字架第一部』である。
表紙には「ROGOSU-TOKYO」と記載。

本には刊行年の記載は無く、
東京限定クラブ会用(記番有)とだけ記載。
訳者は木屋太郎。
木屋太郎は、ロゴス社の松川健文の事。
多分刊行は昭和20年代後半
(昭和28年?)と思われる。
この東京限定版クラブというには、
性の探求雑誌「奇書」の刊行元であった。
この本は仮綴であるが、製本された本も存在する。

戦後、出生率が爆発的に上昇し、
後日、団塊の世代と呼ばれる人々を生んだ。
戦争の束縛から逃れ、
人は性に関しても開放的になった。
そんな中、カストリ雑誌に代表される、
性を赤裸々に語る雑誌が生まれ、
人は貪る様に、読んだものである。
「奇書」もそんな雑誌の一つである。

地下出版、会員制限定本は、
内容が掴めないものが多く、
書誌学的な資料が存在し得ないので、
全貌を把握するのには大変困難な作業である。
また、当時のこのような雑誌に携わっていた人物も
既に物故し、一層把握が難しくなっている。

発禁本、限定本等が市場に出回るのも、
元々の所有者が逝去したからに他ならない。
この様な、本来は門外不出の類の本が
市場に出るのは、一般的には
元の所有者(コレクター・好事家、愛書家)が
死亡し、遺族が処分したからである。
古書というのは、本当にグルグル回るもの。
私が死ねば、蔵書もまた誰かの手に渡る事だろう。