読書 トーマス・ローター著「下等人間・上等人間」

下等人間・上等人間
ナチ政権下の強制労働者たち
トーマス・ローター著
神崎巌訳
未来社
1999年9月25日第一刷発行

人間としての尊厳を奪われ、失わされたとき、
人間がどうなるか。第二次大戦中のナチ政権下、
ヨーロッパの22か国から700万を超す
捕虜・強制労働者がドイツで働かされた。
大人ばかりか子どもたちも。
戦争を知らない世代にはほとんど想像不可能な
シニカルな人間搾取の実態、
当時の恐るべき現実を突きつける衝撃のドキュメント。

目次
老ナチ党員フリッツ・ホフマン
ユーリイ
酒宴と駄弁
ロシアの少女ワーニャとオルガ
墓地
労働教育収容所
ヒトラー少年団員アルフレート・ザイペル
ヴァレンティー
攻撃
銃殺と終わり〔ほか〕

(本書紹介文より抜粋)

訳者解説には「ドキュメント小説ともいうべき形式をとっている」とあり、
『門に「労働が自由にしてくれる」という標語を掲げている強制収容所
あったが、収容所の運営方針は「最低の条件で酷使し、およそ半年で死なせる」』
と書かれている。

最低の条件で酷使し、およそ半年で死なせるということだが、補足するなら
配給される食事は横流し、横領、盗難などで配給水準以下なのが通常であり、
半年程度でさえも生きられればまだ良い方であった。
強制収容所では囚人を出来るだけ(故意に)死なせる方針をとっていた。
ぎゅうぎゅう詰めの貨車で収容所に到着し、貨車から降りた途端、
ガス室への選別がまずある。
収容所到着当日に言いがかりをつけられ殴打や過剰な暴力や銃殺などで
数時間以内に死亡することは珍しいことではなかった。

本書はドキュメント小説ということであるが、ロシア兵捕虜の話が多い。
強制収容所ユダヤ人だけではなく、ドイツ人犯罪者、政治犯、同性愛者、
売春婦、ロシア兵捕虜も収容されていた。