洋古書08 Bayros作 『Im Garten der Aphrodite』103冊目

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今回はFranz von Bayros(バイロス)作『Im Garten der Aphrodite』
アフロディテの苑)を紹介する。
石版画18葉、それに内容を記したボードが付属している。
限定350部。布装洋帙入。
この作品は私的出版であり、
出版社名、刊行年、刊行地の記載は無い。

本書の刊行時期についての考察は、19世紀末か、20世紀初頭に
ミュンヘンか、ウィーンのいずれかの地で刊行されたものだと思われる。
昭和初期に梅原北明により、この『Im Garten der Aphrodite』が
日本に輸入された話も有るので、この事を鑑み、本書の刊行時期は、
20世紀の初めと考えるのが妥当な気もする。

本書は、秘密裏に頒布された地下本で、
好事家やバイロスの愛好家の為に作られたものである。
バイロスは、(ビアズリーと同傾向な作家で有ると言えると思うが)
ビアズリーほど美術的には評価されていないのが残念である。
また、蒐集家によって、秘蔵された作品が多い為なのか、
世間の知名度はいまひとつである。
また画集も非常に数が少ない。
バイロスの作品は膨大な数の蔵書票と
本書の様な秘密裏に刊行された限定本ばかりの為、
全容を把握するのは大変困難である。
バイロスというのは、アール・ヌーヴォとロココ調を融合させ、
極めて繊細で優美な絵を描く画家だと思う。

*本書『Im Garten der Aphrodite』についてはバイロス画集の内、
一番詳細不明な本であり、今後の研究が待たれるところである。
しかし、日本有数のバイロス研究家、バイロス蒐集家の山本芳樹氏が
物故した今、謎は解明される事は無い様な気がする。
また美術史において、バイロスは無いもの同然の扱いを受けているので、
今のところは、これ以上の研究成果は期待出来ないという気がするのである。

*2005年11月24日補足
 本書は1912年刊行?という記述を見つけた。