映画75 『クイルズ』(2000 アメリカ)

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今回は映画 『クイルズ』を紹介。
123分。(原題はQuills.羽ペンの意)
サド侯爵の晩年を描いた、舞台劇の映画化作品。
正直一切の期待は捨てて見てみた。
なかなか良く出来ている。
映画の導入部も素晴らしく、
俳優達の迫真に迫った演技もまた素晴らしい。
(正に狂人に見える)
ここまで自分を捨て、その人物に成りきる事は正にプロである。
マドレーヌ役のケイト・ウィンスレットはとても美しかった。
(彼女がタイタニックに出演した時よりも本作品の方が美しく見えた)
またコラール博士の妻(修道院出の娘)役のアメリア・ワーナーもまた美しい。
アラを探せば、サドの作品が市中で秘密裏に売られるシーンが有る。
そこに装丁済みの本が一瞬写る。
その本は(この映画の舞台となった18世紀にはまだ登場していなかった)
半革装丁であるし、平はマーブル紙ではなく、装飾紙であった。
またコラール博士の妻がサドの作品を読みふけるシーンで
使われる本は、18世紀フランスには無い(英米に見られる様な)
版元製本(に見える)であるし、マーブル紙の文様も18世紀のものではない。
財力を持った、コラール博士の妻であるならば、
街の装丁屋に装丁を頼める程の小遣いは有る筈である。
(実際にサドの本は買う事が出来たのだから)
18世紀の中流階級(以上)で有るならば、装丁を頼むのは普通である。
まあ映画で有るので、致し方無いと言えばそうだろうが、
装丁や時代考証にとても関心がある、私には、どうしても気になってしまう。
またコラール博士邸には、mortと壁に落書きがしてあった。
(貴族に)死を!という意味だろうか。そこだけフランス語であったが、
(最後の場面で)サドが壁に書き殴ったのは、英語であった・・・。
その辺はチグハグである。
フランスを舞台にした映画なのに、英語で演じるのは、そもそも無理がある。
どうせならば、全てフランス語でやって欲しいものだが、
肝心の制作はアメリカなので、どうにもならない。
そんな事を差し引いても、本映画は、なかなか良い作品だと思う。
(言語、時代考証、小道具の問題を除けば他は満足出来る出来栄えである)
俳優の演技力は圧倒されるばかりだった。
しかしTV放映は絶対されることはないだろう。

*3枚目の写真はJustine ou les Malheurs de la vertu(1791)
(2007年12月8日記事投稿)

写真の差し替えの為の再掲載と追記。
近日、Justineの挿絵で検索してきた人がいたので、
以前から差し替えたかった、書影を差し替えて再掲載。

The Quills Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=u--PYnIYewE
(記事投稿時点でなら視聴可能)

サドは実際にはどんな人物だったかは明確ではないが、
反骨ではあるが、教養を持った知識人であり、
ユーモアや遊び心を持った貴族であることは間違いないだろう。