読書 西村 望著 『鬼畜 《阿弥陀仏よや、おいおい》』136冊目

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樫尾卯吉は高知の山峡にはりついた小集落に生まれた。
唖のように物いわぬ子だった。徴兵をのがれて流浪の生活が始まった時、
彼の人生は狂った。――捕えられて入営、やがて脱走、放火、
殺人未遂、軍法会議。人生をやりなおそうと思った時もあったが、
所詮、鬼畜のような殺人人生だけが彼の宿命だったようだ。
酸鼻な犯罪行為と息をのむ現場描写で、
著者が新ジャンルを開拓した社会派ドキュメント! 実録&ノンフィクション
(本書紹介文より抜粋)

今回紹介するのは、西村 望著
『鬼畜 《阿弥陀仏よや、おいおい》』(1981 徳間文庫)である。
同名の邦画が存在するが全く別物である。
この作品は、上記の粗筋通りでは有るが、想像を絶する程、
陰惨な物語であり、また救いが全く無い物語である。
主人公は金が無い為に、僅かな金の為に人を殺し、
そのなけなしの金が尽きると、また、金の為に人を殺すので有るが、
得たのは、ほんの小金である。
どんどん悪い方へ悪い方へ坂道を転がるが如くに突き進んでいくのである。
これほどの衝撃的な作品はまず無いだろうし、
また救いの無い物語であり、虚無感に陥る作品も無いだろう。
それに凶行の一部始終を事細かに描写していることも特筆すべきことである。