読書 新堂冬樹著「炎と氷」

2003/10/1
祥伝社
単行本

1レース数分にして利息5割―分5と呼ばれる
暴利の競馬金融を営む世羅。親友の若瀬と共に、
九州から闇金融の頂点を目指し東京に進出して来た彼は、
情け容赦のない追い込みで同業者からも怖れられていた。
普段はギャンブル狂ばかりの顧客の中に、
ある時現われたのが、堅物の銀行マン・赤星だった。
行内の融資を担保に200万貸してほしいという。
だが、その陰には融資強奪の計画があり、
絵図を描いていた男こそ、盟友の若瀬だった。
彼は風俗金融と呼ばれる風俗嬢専門の闇金融を経営し、
客のキャバクラ嬢に入れ込んでいる赤星の情報を嗅ぎつけ、
退職金もろとも剥ぎ取ろうとしていたのだ…。
カネとプライドをめぐり、運命の歯車が軋み音を
たてはじめた時、“炎と氷”二人の凄絶な闘いが幕を
開けた!鬼才・新堂冬樹が満を持して贈る超絶の
エンターテインメント。
(本書紹介文より抜粋)

新堂冬樹の作品は先に「溝鼠」「無間地獄」「底なし沼」
などを読んでしまったのでどうしてもいつものテンプレ小説、
または量産系作家の大石圭みたいになってしまい、
新堂冬樹も同じような設定、物語、キャラの、量産系作家に
思えてきてしまう。全作品全てに新鮮味があるというのは
難しいことなのは事実だし、それは判っている。

新鮮味を感じるためには今後はガーリー、
フェミニンファッションのぴえん系女子、量産型女子、
地雷系女子、トー横界隈とかゴスロリとかサブカル女子が
登場する、新堂冬樹ノワールが読みたくなってくる。
新堂冬樹の作品は私が知らない世界である、ギャンブルや
風俗業、金貸し、または裏社会、反社、半グレ、チンピラ、
ヤクザ、夜職の女、アウトローの世界を覗き見ることが
出来るのでそこはまだ新鮮味がある。

若瀬が志村に刺殺されるのは予想出来たことだし
花島の時代錯誤の服装のキャラは沢田研二の「カサブランカ・ダンディ」
を思い浮かべた。新堂冬樹は花島をアルカポネみたいと描写して
いたように記憶しているが、アルカポネは白いエナメル靴は
はかないと思う。世羅と若瀬の対決にそこまでの殺し合いになるなら
何故最初から銃器を使わないのかとは思った。

「炎と氷」がVシネマされていてYOUTUBEで予告を見てみたが、
役者達はリアルでは常識人で真面目な方ばかりなので
どうしても上品な演技になってしまう。
新堂冬樹馳星周の作品も映像化は無理で、結局は本物ではない
ために、役者が持つ上品さが出てしまう。