古書 須藤光暉著 一顰一笑 『新粧之佳人』 (1887)116冊目

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今回、紹介するのは、須藤光暉(南翠外史)著の
政治小説で、一顰一笑 『新粧之佳人』。
正文堂より明治20年5月15日刊行の初版である。
初版と再版には違いがあり、挿入されている文中の石版画が
初版だと色刷であるが、再版だとそれが単色刷である。

この『新粧之佳人』刊行された、明治二十年頃は
政治小説が盛んに書かれはじめた時期である。
本書は当時の話題をさらった豪華な装幀であり、
石版画が表紙と挿絵に数葉使われている。
西洋の版元製本を模した造本となっている。
当時*(1)日本が習得したばかりの洋式製本の高い技術力を
示すには、好資料となるだろう。

なお本書に使われた石版画は、
築地活版製造所石版部で刷られたものである。
紙は洋紙だが、劣化は見られない。
多分、輸入した洋紙か、或いは自国生産の紙の
どちらかを使用していると思う。
国内で木綿屑を利用し、洋紙の製造開始が明治8年
木材パルプを使い、洋紙製造が開始されたのは明治22年である。
それを踏まえ、もしかしたら(劣化が見られないので)
木綿屑を利用した、国内生産の洋紙を使用しているかも知れない。

(1)日本は、製品を買うのでは無く、技術を習得した(買った)。
完成品を買うのは容易い。
しかし長い目で見れば、そこには技術の発展も、 また国の発展もない。
それも日本人の気質なのだろう。