後味の悪い映画16 『ファニーゲーム』(オーストリア1997)

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2001年のカンヌ映画祭でグランプリを獲得したミヒャエル・ハネケ監督の97年の作品。
そのあまりにも挑発的で暴力的な内容に世界各地で物議を醸した衝撃の問題作。
監督自身、暴力が不快なものであることを再認識してもらいたかったというだけに、
観た人間は不快と憤慨を覚えずにはいられない内容。
 穏やかな夏の午後。バカンスのため湖のほとりの別荘へと向かうショーバー一家。
車に乗っているのはゲオルグと妻アナ、息子のショルシ、それに愛犬のロルフィー。
別荘に着いた一家は明日のボート・セーリングの準備を始める。
そこへペーターと名乗る見知らぬ若者がやって来る。
はじめ礼儀正しい態度を見せていたペーターだったが、
もう一人パウルが姿を現す頃にはその態度は豹変し横柄で不愉快なものとなっていた。
やがて、2人はゲオルグの膝をゴルフクラブで打ち砕くと、突然一家の皆殺しを宣言、
一家はパウルとペーターによる“ファニーゲーム”の参加者にされてしまう・・・。
第50回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作品。
第33回シカゴ国際映画祭最優秀監督賞受賞。
(映画紹介文より抜粋)

ここまで後味の悪い映画は映画史でもそうは無いだろう。
ブニュエルの「アンダルシアの犬」も精神的嫌悪感を煽るし、
また「悪魔のいけにえ」も不快感を煽る映画で有るが、
この『ファニーゲーム』はまた違った意味での嫌悪感、
不快感を最大限に味わせられる映画である。
そして、また救いが全く無い映画でも有る。
正義の味方もまた中立者の最後まで現れる事は無く、
ただなすがままに蹂躙されていくのみである。
この映画の出だしは安部公房の「闖入者」を連想させる。

観客は、精神的にダメージを受けつつも、ただ傍観しなければならない。
まるで、ルドビコ療法を受ける、「時計じかけのオレンジ」のアレックスの様に・・・。
人生は実に不条理だ。
災難や不幸はいつだって急にやってくるものだ。

それにしても凄い映画を作ったものだ。
いい意味でも、悪い意味でも、映画史に残る作品である事は間違いないだろう。
この映画を見た人は一生涯、この映画の不快さ、嫌悪感を忘れる事は無いだろう。

  *日本の役者と違い、外国の役者は演技が段違いに上手い。