2011年双葉社刊。
警視庁三課の刑事・神崎は大量の古美術品が
市場に出回ったことから、捜査をはじめた。
彼が辿りついた松涛の富豪・井上家で、
身寄りのないはずの井上を世話をしていたのは、
榊田恵、学の姉弟。
ふたりは井上の隠し子だという。
事件の臭いを感じた神崎は密かに内定を始めたの
だったが、いつしか仕事を忘れ恵の身体に溺れてしまう。
(紹介文より抜粋)
提灯記事ではなく、正直に感想を書く。
数年ぶりに馳星周の作品を読む。
「沈黙の森」につぐ4冊目。
気になる箇所があった。
265Pに榊田恵(妙)のセリフだと思うが、
「それでのんべんだらりと暮らすの?」というセリフがあり、
妙は三十代のはずだが、北海道の30代の女はこんな時代錯誤的な
ことを言うのかと思ってしまった。
また、序盤のバーのシーンで
「盗み聞きとまでは言わないが、神崎たちの会話が
耳に入っていたのだろう、バーデンダーは頬を赤らめながら
遠ざかっていった」という文章があるが、こんなウブなバーテンが
いるのかと思ってしまった。
馳星周作品、または文学作品としてはまあまあの出来、及第点。
榊田恵、学の姉弟という設定ではあったが、実際は中学生の時に
父親にレイプされ、その孕んだ子が学(智彦)であり、姉弟ではなく、
母と息子であった。最後の神崎の死はかなり無残で哀れであったし
ありがちなハッピーエンドな物語ではまったくない。
本作品のタイトルはウィリアム・アイリッシュの「暗闇へのワルツ」
彷彿させる。「暗闇へのワルツ」も女詐欺師が暗躍し男を誑かし
破滅させる話である。